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【「食」から移住を考える①】せり体験から野菜詰め放題まで! “食と生産者”を身近に感じる「秋の農業まつり」レポート 記者:水野千尋

生産者の顔が見える取り組みをしているおいらせ町

農業に従事している住民が多い青森県上北郡おいらせ町で俄然、興味がわいたのは、生産者の顔が見える取り組みをしていることでした。

何を食べるか。それは、「どう生きていくか」に向き合うことと等しいように思います。

「丁寧な暮らしを心がけたい」と思ってはいても、仕事の忙しさや不規則さを言い訳にして、理想とは程遠い生活を送っています。

それでも止められないのは、徒歩1分圏内にあるコンビニや便利なお惣菜、携帯をクリックするだけで届く出前のようなサービスがあふれているから。

しかし、このおいらせ町では、生産者の笑顔と新鮮な食べ物があふれていました。ここに移住すれば、こうした環境が身近になることも容易に想像ができました。

全2回でお届けする、【「食」から移住を考える】。
10月の休日に行われた「おいらせ町秋の農業まつり」を紹介していきます。


秋の農業まつりは、町民が集まる1年に1度のおまつり


おいらせ町に着いたのは、雲ひとつない晴れた日。青森県=とにかく寒いであろう、と考えた私はヒートテックに厚手のカーディガンを着込んでいたので、少々拍子抜け。

あとから町民の方々に話を聞いたところ、いわゆる「青森県」で県外の人が連想することは、津軽地方のイメージが圧倒的に多いのだとか。

おいらせ町が位置するエリアは「南部地方」で、冬でも積雪量が少ないということ。そして、りんごよりも米や野菜を作っている農家の方が多い、ということも初めて知りました。

八戸駅でレンタカーを借りて向かったのは、イベントが行われているという「縄文の森イベントホール」。近くの駐車場はどこも満車で、停めるのも一苦労という盛況ぶりです。

会場内は、農家さんや地元企業、有志で集まった団体によるブースとステージで行われるプログラムで構成されており、広場には休憩スペースも。


地元農家自慢の新鮮野菜が大判振舞い! 試食コーナーもたっぷり


私が会場に到着した午前11:00からは中国からの研修生による中国餃子の試食コーナーが始まり、長い行列ができていました。

餃子はものの数分で完売……! せっかくなので、研修生のみなさんの集合写真を撮影させていただきました。

おいらせ名物のひとつ「おっぱいメロン」を収穫している吉田種苗さんのブースでは、にんじんジュースの試飲やメロンの販売が行われていました。
にんじんジュースは、野菜が苦手な子どもでも飲めるぐらいクセがなくて甘い!

吉田種苗さんのブース

有機肥料で育てられ赤ちゃんでも安心して食べられるという「おっぱいメロン」は、ちょうど取材した10月中旬が最盛期。残念ながら早々に完売してしまっていましたが、代わりに「おいらせレッド」をいただくことに。こちらも柔らかくてジューシーな食感と甘みです。

美味しそうなメロン「おいらせレッド」!

最近では少しずつ「おっぱいメロン」の認知度も上がってきており、関東近郊からのお問い合わせも多い、とブースでお話を伺うことができました。

ちなみに、メロンは一切れ100円。他のブースでも100円~300円で特産品のグルメが楽しめるなんて、都会のお祭りではなかなか見かけられないのではないでしょうか?

それだけではありません。農業まつりでは、「来場者先着200名限定で、新米500gをプレゼント」なんていう太っ腹企画や、野菜の即売会コーナーも!
即売会では、にんじん詰め放題100円、だいこん・キャベツ・白菜が1本(玉)100円と破格の値段……。

ちびっこ向けには、お煎餅を自分で焼いて食べることができるブースや、輪投げのブースなどもあり、ファミリーで来ても子どもたちが飽きずに楽しめる工夫がされていました。
小さなころから「食」を身近に感じられるのも、「農業まつり」ならでは。

ステージでのショーや農業ミニせり実演会も!

一方、ステージでは、地元の保育園によるマーチング演奏や歌謡ショーのほか、北里大学のチームによるよさこいなどが行われていました。
よさこいの迫力あるパフォーマンスに、観客も手拍子でこたえます。

それ以外にも、農業にまつわる面白いプログラムを発見。それは、「ミニせり実演会」!
テレビで築地(現在は豊洲)市場のせりを見たことぐらいしかない私。参加者は番号が書いてある紙を受け取り、事前にレクチャーを受けます。

せりの参加方法、実は難しくありません。100円単位で数を刻み、指で数字を示しながら声をあげていくのです。
「声の通るひとが有利なんですよ」とは八戸中央青果の方。せりにかけられる商品もみかんやぶどうなど、それも箱単位!

最初こそなかなか手が挙がらずおとなしかった参加者も、徐々に慣れてくると四方八方から声があがるようになり、最後のほうはスピーディーな本物のせりを見ているようでした。


おいらせのお米を活かした酒造りの取り組みも


農業まつりで売られているのは、野菜や米だけではありません。

町の農家有志で構成された「おいらせ農酒会」が出展しているブースでは、おいらせ町の「まっしぐら」というお米を使った日本酒『穂の泉』を販売していました。
このお酒、町内の酒店でしか売られていない、とっても貴重な限定品。

このブースで対応してくれたのは、おいらせ農酒会の会長でもある川口さん。「このお酒に含まれているお米の1/15ぐらいは自分のところのだよ」と教えてくださったのでした。

おいらせ町でもこうした取り組みはここ最近のことなのだとか。

元々、町には桃川酒造という日本酒の酒蔵、そして近辺には米農家があるにも関わらず、地元の米を使ったお酒はなく、また町民が飲むお酒もビールや九州の焼酎……など他の地域のものでした。
そこで川口さんをはじめ、地元の農家が集まって作ったのが「穂の泉」なのです。

後日飲んでみると、すっきりとしながらも少し甘みがあり、アルコール度数は強いもののお酒に弱い私でも飲みやすい味でした。


【番外編】家業だけでなく「町」を継いでもらうために


青森県が初めてで、このあとどこへ行こうか? と迷っていた私に、川口さんが町を案内してくれることに。

車を走らせると、ここおいらせ町は海に面しているのだということがわかります。サーフィンのスポットとしても有名で、夏場には多くの人が訪れるのだそう。
そして、それ以外にも釣りができる環境が揃っているのです。

3.11の震災時、宮城や福島が被災地として取り上げられることが多かったけれど、同じようにおいらせ町も被害に遭う人がいたこと。
そのために、農家も打撃を受けたこと。米農家の方々も、海水に含まれている塩を除去するところからはじめ、ようやく出荷できたことなどを話してもらいました。

「地震海鳴りほら津波」の石碑。これは、昭和8年に起こった三陸地震を踏まえ、建てられたもの。

この高台には避難施設もあり、多くの人がしばらく暮らせるだけの食糧や防災用品が揃っているそう。こうした教訓や取り組みを、しっかり町の人たちが共有できていることは大切だと思いました。

案内してもらうなかで私が一番印象に残った風景は、東北新幹線と青い森鉄道に挟まれた田園地帯。
上の写真をまっすぐ進むと新幹線の線路が見えてくるのですが、晴れた天気、夕日に染まり田んぼがきらきら輝く贅沢な景色は、ずっと見ていられるほど。

「自分が小さいころは“汽車”と言っていてね。田んぼの向こう側に見えるトンネルから、汽車がいきなり顔を出すのが不思議だった。面白いなと思って」とは川口さん。

町の若い人たちには、親の土地や家業を継ぐだけではなく、自分たちの生まれ育った「おいらせ町」を継いでもらわなくちゃいけない。
それと同様に、2日間しかいない私にもおいらせ町の良さを知って、帰ってもらいたい。

と教えてくれた川口さん。その思いがすごく伝わってきて、またおいらせ町に帰ってきたいなと心から思えた出会いでした。

農業まつりへの参加や川口さんとの交流をとおして、食材が食卓に並ぶまでにはさまざまなストーリーがあるのだということが分かりました。

毎日のことだから、食べるものは自分が納得したものを口に入れたいし、生産者の思いが詰まっているものを選んだ方がずっとおいしく感じられるはず。

その日々の積み重ねこそが、心身ともに健康的な生き方につながるのではないでしょうか。おいらせ町では、そんな暮らしをとても身近に感じることができました。


記者の紹介

水野 千尋

フリーライター&編集者。旅行ガイドブックの出版社を経て、現在は音楽事務所でバンドやアーティストのマネージャーを務めながら、フリーランスとして旅に関連する媒体の取材やライティング、タイアップ広告のディレクションなども行う。得意分野は東南アジア(特にラオス)、海外ひとり旅、女子旅など。

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