東西に奥入瀬川が流れる青森県の「おいらせ町」。
約30年前の1980年代に「一村一品運動」という、各市町村がそれぞれ主体的に1つの特産品を育てることにより地域の活性化を図ろうとする運動が広まったときから、ここでは鮭が名産品となっています。
「日本一のおいらせ鮭まつり」は活気あふれる体験イベント
毎年11月に開催されるおいらせ鮭まつりの来場者は開催2日間で23,000人ほど。おいらせ町の人口は約25,000人ですが、それに近い数の人が訪れるという超ビッグイベントです。岩手や秋田、仙台など県外からの来場者はもちろん、埼玉など関東圏から足を運ぶ人も! 毎年必ず参加しているというファンも多い、人気のおまつりです。
鮭まつりが行われるのは、おいらせ町の「しもだサーモンパーク」。
かつて公園内でスケートリンクとして使われていた場所が、鮭まつりの際には鮭が放されるいけすとして使われます。
目玉イベントは子どもたちも喜ぶ「鮭つかみ」!
(写真提供:おいらせ町)
日本人で鮭を食べたことがないという人はほとんどいないと思いますが、切り身になっていない鮭ってどんな魚か皆さんご存知ですか?
鮭まつりでの名物はなんといっても鮭つかみなんですが、実際に目の前で見ると、鮭はなかなか大きくて活きがいい魚です。力が強く泳ぐスピードが速いので、これをつかむのはちょっと大変!
スタッフの方によると鮭の顔を見るだけでオスとメスの違いが分かるのだとか。写真のように下のあごがとがっているのはオス。メスはもう少し丸みがあるそうです。つかまえるコツは「しっぽをつかむこと」だとか。
つかみ取りで取った鮭はすぐに解体してその場で食べることもできますし、調理しやすいかたちにしてもらえるので切り身で持ち帰ることもできます。
おまつりの際にはなんとこの鮭つかみのために2,000匹もの鮭が放たれるそうで、おいらせ町でいかにたくさんの鮭が獲れるのかがよく分かります。
おまつりの最中も、横を流れる奥入瀬川で次々と鮭がとられていました。
町の人に聞くと「親子でいけすに入れるので、小学生未満の子でも皆で一緒に楽しめる」「実際に川で鮭がのぼってくる様子が見られる」ことなどがこのお祭りの魅力だといいます。
日本でも珍しい、おいらせ町の鮭とり施設
川の左右を大きく横切る段差は、泳いできた鮭をこの先に通り抜けられないようにするためのもの。
先に進めずこの場所に集まる鮭をどんどん獲っていきます。鮭ってこんなにたくさん獲れるものなのかと驚きましたが、きっとおいらせ川は鮭が育つのにぴったりの環境なのだと思います。
ちなみにこの施設はもともと内陸部の十和田市にあったものですが、十和田からだと海まで少し距離があるということで、おいらせ町に移動してきたんだそうです。
(写真提供:おいらせ町)
町内にはさらにもう1つ「インディアン水車」と呼ばれる大型の鮭とりの施設があります。こうした施設を所有しているのは、北海道の千歳市とここおいらせ町だけだとか。
そんなおいらせ町のとれたての鮭が食べられる日本一の「おいらせ鮭まつり」、ほかではなかなか体験できない特別なイベントなので、一度足を運ぶ価値ありです!
鮭まつりで住民のみなさんに聞いた「おいらせ町のいいところ」
今回鮭まつりで出会ったおいらせ町のみなさんに、町のいいところや好きなところを聞いてみました。
「入りたいときに温泉に入れる」
「紅葉を見たかったら、ちょっとでかければすぐに見られる」
「電線がないので空がきれい」
「人が多くないので、綺麗な景色を独り占めできる」
「魚を食べたいと思ったら年中釣って食べられる」
「大根や人参など旬のものが採れる。それが新鮮でおいしい」
「ここでできる農業、漁業はじつはけっこう稼げる(!)」
……と、皆さんのお気に入りポイントが次々とでてきました(じつは、このほかにもまだまだありました)。
女性の方に聞くと「おいらせ町は車一台あればどこへでもいけるし、なんでもあって困らない」とのこと。おしゃれなカフェや飲食店もあり、イベントも盛んで飽きることもないそうです。
青森県とはいえおいらせ町は雪深くなることが少ないので、雪かきをする必要がないために力仕事も少ないところがいいんだとか。
たくさんの方にいいところを教えていただきましたが、皆さんおっしゃっていたのが、「やってみたいなと思ったことが、気軽になんでもできる」「田舎のいいところはたくさんあるけど、田舎すぎないので不便さがない」ということでした。
田舎すぎない、インフラが整っているちょうどいい田舎
日々都会で暮らしていると、どうしてもどこか疲れてくるということがあると思います。田舎が恋しいな、静かで自然豊かなところで暮らしたいな、とは思うものの、あまり田舎すぎてものが買えない、インフラが整っていない、移動が不便となると困ってしまいますよね。
その意味で、皆さんがおっしゃるように「ちょうどいい田舎」なのがここおいらせ町かもしれないなと思いました。
おいらせ町の川で生まれた鮭は海で育ち、4年後に帰ってきます。町で生まれた若者たちにも、都会へ一度出て行っても子育てをするくらいの頃に、鮭と同じようにまた町に帰ってきてほしい、とおいらせ町のお父さんたちはおっしゃっていました。
記者の紹介
片桐 優妃
会社勤めをしながら、高校時代から10年以上続けるモデル・ブロガー・ライターとしても活動。世界40か国、国内30都道府県旅行済み。生きている間に1つでも多くの国・地域に行くのが目標
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